超加工食品(UPF)とは何か?身近な食品を確認しよう
NOVA分類とUPFの定義
食品はその加工度によって「NOVA分類」と呼ばれる4つのグループに分けられます。そのなかでも最も加工度が高いグループ4が「超加工食品(Ultra-Processed Food:UPF)」です。
UPFの特徴は、食品添加物(乳化剤・着色料・人工香料・保存料など)が多く使われており、もとの食材の形や栄養構成が大きく変わっている点にあります。
具体的な食品例
日常的に目にする食品の多くがUPFに含まれます。
- 菓子パン・スナック菓子・インスタントラーメン
- 清涼飲料水・エナジードリンク・フルーツフレーバー飲料
- 冷凍ピザ・冷凍ミールキット・ファストフード
- 風味付きヨーグルト・加工チーズ・マーガリン
- 大量生産された既製品パン・シリアル
「加工食品=体に悪い」というわけではありませんが、UPFはその加工の程度と添加物の種類・量が一般的な加工食品とは異なります。
この研究はどのように行われたのか?
18万人・13年間の大規模コホート研究
この研究は、英国の大規模医療データベース「UK Biobank」を用いた前向きコホート研究です。2006〜2010年に登録された183,474人を対象に、平均13.1年にわたって追跡が行われました。
追跡期間中に、うつ病と診断されたのは5,453人、不安障害と診断されたのは6,763人でした。
統計解析にはCox比例ハザードモデルが使用され、年齢・性別・喫煙・運動・BMIなどの交絡因子を調整したうえで関連が検討されています。
UPF摂取量の測定方法
UPF摂取量は以下の3つの指標で評価されました。
- サービング数:1日あたりの超加工食品の摂取回数
- エネルギー比:総カロリーに占めるUPFの割合
- 重量比:総食事重量に占めるUPFの割合
これら3指標すべてで一貫した結果が得られたことが、この研究の注目点のひとつです。
UPF摂取量が多いとうつ病・不安障害のリスクはどう変わるか?
うつ病リスクとの関連
UPF摂取量を4つの群(Q1〜Q4)に分けて比較したところ、最も摂取量が多いグループ(Q4)は最も少ないグループ(Q1)と比べて、うつ病との関連がすべての指標で報告されています。
- サービング数が最多のグループ:ハザード比 1.22(95%CI: 1.13–1.31)
- エネルギー比が最高のグループ:ハザード比 1.13(95%CI: 1.05–1.22)
- 重量比が最高のグループ:ハザード比 1.26(95%CI: 1.17–1.36)
※ハザード比とは、ある事象(ここではうつ病の診断)が起きる相対的なリスクを示す指標です。1.22であれば、Q1と比べてQ4では約22%高い関連があったことを意味します。
不安障害リスクとの関連
不安障害についても同様の傾向が報告されています。
- サービング数が最多のグループ:ハザード比 1.13(95%CI: 1.06–1.21)
- エネルギー比が最高のグループ:ハザード比 1.13(95%CI: 1.05–1.21)
- 重量比が最高のグループ:ハザード比 1.11(95%CI: 1.04–1.19)
うつ病と比較すると関連の大きさはやや小さいものの、3指標すべてで一貫した関連が報告されています。
なぜUPFがメンタルヘルスに影響する可能性があるのか?
この研究は観察研究であるため、なぜ関連が生じるのかという因果メカニズムは確立されていません。ただし、先行研究をもとにいくつかの仮説が考えられています。
腸内細菌・炎症・栄養素欠乏の3つの仮説
① 腸内細菌を介した経路UPFに多く含まれる添加物(乳化剤など)が腸内細菌叢のバランスを乱すことで、腸と脳をつなぐ「腸脳相関」に影響する可能性が指摘されています。
② 慢性的な炎症UPFに多い精製糖・トランス脂肪酸・添加物は、体内の慢性的な炎症を引き起こすことが知られており、炎症とうつ病の関連は複数の研究で報告されています。
③ 栄養素の欠乏UPFは食物繊維・ビタミン・ミネラルなどが乏しく、メンタルヘルスに関わる栄養素(マグネシウム・オメガ3脂肪酸・B群など)が不足しやすい食事パターンにつながる可能性があります。
注意点:この研究で「言えること」「言えないこと」の整理
この研究の結果を正しく解釈するために、以下の点を確認しておきましょう。
言えること
- UPF摂取量が多いグループは、少ないグループと比べてうつ病・不安障害の診断との関連が報告されている
- この関連は、サービング数・エネルギー比・重量比という3つの異なる指標すべてで一貫して見られた
- 183,474人・13年以上という規模は、同テーマの研究のなかでも大規模な部類に入る
言えないこと
- コホート研究(観察研究)であるため、UPFを食べることがうつ病を引き起こすという因果関係は確立されていない
- 「逆因果」の可能性がある:気分の落ち込みや不安によってUPFを選びやすくなるという方向の影響も否定できない
- 日本人への直接的な一般化には注意が必要(対象はUK Biobankの英国在住者)
- 超加工食品(UPF)とはNOVA分類のグループ4に属する、添加物を多く含む高度加工食品のこと
- 18万人・13年追跡のコホート研究において、UPF摂取量が多いグループでうつ病・不安障害との関連が報告されている
- 関連の大きさはうつ病でハザード比1.13〜1.26、不安障害で1.11〜1.13程度(摂取指標による)
- 観察研究のため因果関係は未確立。逆因果の可能性も含めて解釈する必要がある
- 腸内細菌・慢性炎症・栄養素欠乏という複数の経路が仮説として挙げられている
参考文献:Sun M, He Q, Li G, et al. (2023). Association of ultra-processed food consumption with incident depression and anxiety: a population-based cohort study. Food & Function, 14(16), 7631–7641. https://doi.org/10.1039/d3fo01120h | ※本記事は上記論文の内容を解説するものであり、特定の食品・サプリメント・治療法の効能を示すものではありません。健康上の判断は必ず医師・専門家にご相談ください。